「アプリからボットへ」スマホでのコミュニケーションの未来をイセオサム氏が語る

 

イセオサム

慶應義塾大学卒業後に日本テレビ放送網に就職。株式会社オプトでモバイルの広告代理業務を経て、2008年株式会社HALOを共同創業、取締役COOに就任。「ボケて」などプロデュースしたアプリは合計1,000万DLを突破。2013年PLAY株式会社を創業、代表取締役に就任。現在はチャットボットマーケティングツールを提供する株式会社REACTのほか、複数社のアドバイザーを務める。

 

スマホアプリが飽和した今、いかにユーザーとのコンタクトポイントを構築するか

ーーアプリの誕生から10年が経ちましたが、今までの流れをどのように見ていますか?

この10年でスマホが生まれ、ユーザーはアプリをメインに使うようになりました。アプリを通してユーザーとコミュニケーションするには、まずユーザーにアプリをインストールしてもらうことが必要ですが、その流れが変わりつつあります。数年前まではASOやリワード広告、アドネットワークなどを利用することで、コストでユーザーを獲得することができました。しかし、近年アプリ数の増加とゲームやコマースなど巨大なアプリの登場によって競争が激化し、1つアプリをインストールしてもらうために数百円もコストがかかるようになりました。またアプリはインストールしたで、継続的に使ってもらう必要がありますが、数あるアプリの中から自社のアプリを選んでもらうことは、より難しくなってきたと言えます

 

ーー今後、スマホ上でユーザーとコミュニケーションするにどうすればよいでしょうか?

アプリはインストールまでの障壁が高く、CPIも昔より高くなっています。スマホといえばアプリという認識がありますが、UIの作成も大変なので半端なものなら作らない方が良いと思います。いかに自然にユーザーとのコンタクトポイントを作るかが重要です。そこで僕が注目しているのがチャットボットです。

 

ーーなぜチャットボットなのでしょうか?

理由は2つあります。1つは「ユーザーがコンスタントに使用するアプリが限られている」ためです。現在、スマホユーザーが使用するアプリはFacebookやLINE、Youtubeといった30つ程に集約されています。既存のアプリが大きく成長した結果そこでユーザーが満足しており新しいアプリをインストールする必要が低くなった時代とも言えます。それならば既存のアプリをプラットフォームとして捉えて、その上にコンテンツを乗せていく方が合理的ですよね。facebook MessengerやLINEのようなプラットフォーム上にコンテンツを乗せるようなビジネスモデルが今後増えていくと思います。

 

ーーなるほど。

もう1つの理由は「コスト」ですね。ざっくりですが制作費はアプリだと300万円、ボットは50万円、ウェブサイトだと30万円程です。また、ボットはメッセージングアプリの上に乗せるためUIのデザインがいりません。親指で操作できるという利便性もあるので、アプリとウェブサイトの中間にボットがあると考えると分かりやすいと思います。

 

 

コミュニケーションをボットで代替していく

ーーウェブサイトやアプリにはないボットのメリットは何でしょうか?

スマホ上で何かを説明する際、ウェブサイトだと情報が多すぎるので、ボットのように対話形式で必要項目を1つずつ埋めていくコミュニケーションの方がユーザーの理解が進みやすいと思います。実際にウェブサイトよりMessengerの方がユーザーのエンゲージメントが30%以上高かったというデータもあります。

 

ーー「インタラクティブ性」がボットの特性というわけですね。その特性を活かせる分野は何があるでしょうか?

例えばショッピングやカスタマーサポートの分野が合うと思いますよ。人と直接話さなくていい気軽さで細やかな対応までできれば、メールよりも高いエンゲージメントが得られると思います。ボットが普及すれば業務的なコミュニケーションの大部分を代替できるでしょうね。

 

ーー人が仲介せずに人っぽさを出せるところが強みなんですね

そうですね。例えば美容院の予約はHot Pepper Beautyなどが主流ですが、最近では美容師の方と個別に連絡して予約してる人が結構いますよね。そのコミュニケーションの一部をボットで代替すれば、美容師の方の負担も軽減できると思います。その分、本来の仕事であるヘアスタイルの提案や、カットに集中できますし。もし美容師と同じ数だけボットが作られたりしたら面白いですよね。

 

 

自分の寿命が増えているような感覚

ーーイセさんの考えるボットの未来像について伺いたいです。

最近だとMessengerやLINEなどで大量のやりとりをしますが、そのほとんどが同じような内容だと思いませんか。そういうルーティンコミュニケーションをボットに代替して欲しいと思ってます。例えば僕はよくオススメの本を聞かれるので、それを僕の「本の紹介ボット」に任せれば便利ですよね。ボットなら同時に10人とのやりとりも可能ですし。サイトやアプリと違ってボットだと内容の更新や編集が楽なのでタイムリーに本の紹介をすることができます。

 

ーー確かにルーティンコミュニケーションはたくさんありますよね。ビジネスでもそのような場面が見受けられます。

例えば60分の会議の最初の30分はボットで代替できる内容ではないですか?ビジネスではお互い報告のようなやりとりが多いのでボットで代替できる場面は多いと思います。コルクさんが宇宙兄弟のムッタを活用したボットを使ったように( ムッタbot選考 株式会社コルクHPより)、採用活動もボットでできますよね。ボットに任せる部分は任せて、濃いコミュニケーションに時間を使うのが重要です。サーバーを同時並行させるように、ボットでコミュニケーションを同時並行して行うことが可能だと思います。

 

ーーそれ以外にボットの効用はありますか?

僕は既に活動の一部をボットで代替していますが、自分の分身が他人と会話をしているのを見て不思議な感覚になります。自分の寿命が増えているような感覚です。この感覚は自分の活動を大勢の人に見てもらうyoutuberにも共通するかもしれませんが、ボットはインタラクティブである分、その感覚が強いと思います。ボットで自分の存在を増やすことでリーチできなかった人にまでアプローチすることができます。

 

ーー自分の分身としてのボットを作るということですね

そうですね。また自分の生きたかった人生をボットで生きるというのも面白いと思います。僕は家電が好きで家電芸人になりたかったんですけど(笑)。家電の知識をボットにいれて、「家電芸人イセオサム」を作りたいですね。オススメの家電を人に紹介することでアフェリエイトで稼ぐこともできるかもしれません。優秀なボットを複数作れば、従来では不可能だった人数にリーチできますし、youtubeに動画を投稿するようにボットで自分の存在を増やしていくというのは面白いと思います。

 

 

イセオサム氏がアドバイザーを務める株式会社REACTで作成した「イセオサムボット」。ボット上でイセオサム氏に仕事の相談や一緒に遊びに行く約束が行える。コミュニケーションを自動化するための実験を行っている。イセオサムボット :https://www.facebook.com/messages/t/iseosamubot